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私は葵(あおい)。33歳で看護師です。
3つ年上の裕介とは7年前に知り合って、それからずっとくっついたり離れたりを繰り返してきました。いわゆる“くされ縁”みたいな感じです。
付き合って2年目くらいの時、裕介が浮気をし、私がすごく怒って1度は別れました。
でも、その時は3ヶ月くらいしたら、裕介が浮気相手と別れて戻ってきたんです。
「本当に好きなのは葵だって気づいた。俺がバカだったよ。これからは絶対に浮気なんてしないから…」
裕介はそう言ってくれました。
心から謝ってくれたし、私もその時は裕介のことが好きで好きで仕方なかったからあっさり許して復縁しました。その後裕介は言葉通り、浮気していなかったと思います。
次の危機は、私の勤め先の病院が変わって、夜間シフトが増えた時でした。
お互いの生活の時間帯が完全にズレてしまって会う時間がとれず、ひどい時なんか連絡をとる暇もなく…。
付き合って4年目くらいということもあって、少しマンネリだったのかもしれません。
全然会えない日々がずるずる続いて…。
LINEも途切れがちで、お互いの休みの日をやりくりして会うってこともない状態でした。
そんな状態で裕介とは不安定な関係でしたけど、それでも私の中に結婚願望は人並みにありましたし、いずれ結婚するのならやっぱり裕介なのかな〜と漠然と考えていました。
久しぶりに裕介とデートの約束をしていた日の前夜、いきなり裕介からLINEが…。
「ごめん、明日会えなくなった。実は、急に転勤が決まったんだ…。もう再来週には向こうにいかなきゃならないんだよ」
「えっ、いきなりだね。じゃあ、私たち遠恋になるんだね〜」
私はつとめて明るくそう返したけれど、急な話の展開にショックを受けていました。
結局、裕介の転勤前にゆっくり会うこともできず、その後はぽつぽつとLINEのやりとりをする遠恋状態に…。
私はたまに遠慮がちに「そっちに遊びに行こうか…」と裕介に提案したけれど、それにも曖昧な返事しか返ってきませんでした。
そして、ついに…。
「ごめん、LINEで言うのもなんだけど…。俺の転勤で距離ができちゃったし、仕事も結構キツいんだ。今、あんまり葵のことを考えている余裕がなくて…実は別れたいんだけど…」
ためらい気味な言葉だったけど、裕介から別れを切り出されてショックでした。
でも、遠恋という会いづらい状況を考えると、私は裕介の言葉を受け入れるしかありませんでした。
裕介との別れから3ヶ月…。
夜勤明けに久しぶりに親友の恵美と会うことに。
その日裕介と別れたことを恵美に話しました。
最初は驚いていた恵美ですが、ふと占いをしてみないかと誘ってくれたんです。
「ねえ、私たちもう結婚してもいい頃だよね。葵も裕介さんと別れたんだし、早く次の彼氏作りなよ…試しにこの占いをやってみない?」
そう言って見せられたのがスマホの画面。
「これ、私も最近教えてもらったんだけど、誕生日で占うの。案外当たっているよ」
恵美の薦めでさっそく誕生日の数字を入力してみたら…。
・運命のお相手は、以前からよく知っている人の可能性が高い
・幼なじみのように親しい人かも
・イニシャルはSかT
(え〜、いやいや私は裕介と別れたばかりだし…そんな簡単に新しく出会えるはずもない)
今の自分の状況とは違うよな〜。
だけど占い結果を信じたい…その時の私の気持ちはちょっと複雑でした。
それからほどなくして、会社帰りのことでした。
よく立ち寄るターミナル駅近くの書店で、立ち読みしていたら…。
「あれっ、葵ちゃんじゃない?」
「えっ? 崇くん?」
「そうそう、崇。久しぶり〜」
高校時代、テニス部で一緒だった崇くんと偶然再会。向こうから話しかけてきてくれたんです。私たちは同学年ということもあり、気やすく話せる仲でした。
卒業してからほとんど会っていなかったけれど、会えば時間を越えて話が弾み、その夜は結局一緒に食事もして、終電まで2人で盛り上がったんです。
時間の隔たりはあったけれど、もともと親しかった相手だから、なんのこだわりも躊躇もなく、いくらでもおしゃべりできました。元彼の裕介の話もしてしまったくらいです。
帰り際に
「ねぇ、よかったらこれからも暇な時に会わない? 休みの日にテニスしようよ」
そう言われて崇くんとはその晩LINEを交換。
それからはごく自然に連絡を取り合ったり、会ったりするようになりました。
相変わらず私の仕事は忙しかったけれど、崇くんが時間や休みを合わせてくれて、気軽な感じで会うことができたんです。会えば話が弾み、私自身すごくリラックスできました。
そんな矢先、運命の日は唐突に訪れました。
「葵ちゃん、明後日休みって言ってたよね。俺も休みだから、よかったら1日どこかにいかない?」
いつもは仕事帰りにご飯に行くだけだったのに…なんだろう…もしかして告白でもされるのかな?
なんて内心ドキドキしながら、私はすぐにOKのお返事をしました。
当日、待ち合わせ場所に行くと、崇くんから手渡されたのは前々から行きたかった美術展のチケットでした。
2人で作品を鑑賞しながら語りあったり、ミュージアムショップでお揃いのグッズなんて買ったりして、久々にはしゃいでしまいました。
(そういえば、裕介はこんなことしてくれなかったな…)
もし崇くんが彼氏だったら…なんて考えている自分がいました。
そして帰り道、2人で何気ない話をしていた時、崇くんがいきなりこう切り出してきたんです。
「葵ちゃん、今は誰とも付き合っていなんだよね。だったら、俺とはどうかな」
「えっ!」
突然の告白に、私はびっくりして固まってしまいました。
「葵ちゃんと再会した時、もしかして運命なんじゃないかって思ってたんだ。それに、話せば話すほど好きになってしまって…」
私の頭の中で、一瞬のうちにいろいろな思いがよぎりました。
(これって告白? やっぱり特別のデートだったんだ。嬉しい!私だって、会えば会うほど崇くんに惹かれてきてるし…)
私は迷わず
「ありがとう」と答えていました。
ちょっと驚いたけれど、それは嬉しい驚きでした。
私も崇くんと会っていると楽しいのと同時に気持ちが安らいで、この人とずっと一緒に過ごせたらいいなって思い始めていたから…。
後から考えると、この時は私のほうももう、崇くんを好きになっていたんだと思います。
あれから3カ月。崇くんと私は「2人が34歳のうちに結婚しようね」と約束しています。
裕介とは長く付き合ってきたけれど、別れる時はあっけなくて…。
(裕介は結局、私が一生一緒に歩んでいく相手ではなかったんだな〜)
と今は思っています。
崇くんとはすでに両家の挨拶も済ませました。後は結婚に向かって進むだけです。
思えば、あの占いをしたことがきっかけで、新しい出会いに前向きになれました。
占いで出てきた「イニシャルT」は崇くんの「T」だったんです。
結果的に運命の相手を見間違うことがなくて、本当によかったと思います。